こんにちは、横山です。
本日は、「五體字類」について紹介します。
五體字類(ごたいじるい)とは
五體字類は、漢字1文字について「五つの書体」を収録した書体字典です。
掲載される五つの書体は次の通りです。
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篆書(てんしょ):漢字の最も古い形を残す書体で、書道作品に押す落款印などにも使われます。
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隷書(れいしょ):横画が安定し、波磔(はたく)と呼ばれる独特の払いがある書体です。
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楷書(かいしょ):現在もっとも広く使われる基本の書体で、点画が正確に整えられています。
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行書(ぎょうしょ):楷書を基にしながら、一部を続けたり省略したりして流れを持たせた書体です。
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草書(そうしょ):大きく省略・連続して書く書体で、最も変化が大きい書体です。
五體字類の魅力と正しい字形の大切さ
五體字類の大きな魅力は、同じ漢字でも書体によって形がおおきく違うという発見があることです。
書体ごとの特徴を比較することで、線や点の意味が理解しやすくなり、作品にも深みが出ます。
そしてもう一つ大切なのが、正しい字形を確認することです。
書道の試験(審査)では、いわゆる「嘘字(誤字形)」を書いてしまうと、試験の対象外として外されてしまう場合があります。
崩し方を誤って覚えてしまったり、草書や古典の形を独自解釈してしまうと、結果的に「本来存在しない字」になってしまいます。
その点、五體字類は各書体の典拠(どの古典から引用されているか)が明記されているため、
「どの形が正しいのか」
「この崩しはどこから来ているのか」
を確認するのにとても役立つ資料です。

書籍の情報:正統書房『五體字類』
出版社公式サイト:五體字類 改訂第四版 | 西東書房
実際どう使うの?
① 臨書の前に「形のヒント」を得る
臨書したい字があるとき、五體字類で他書体の形を見ておくと、線や点画が持つ意味を理解したうえで書けるようになります。
そうした気づきが積み重なることで、作品にも自然と深みが出ます。
② 作品づくりで字形をアレンジする
作品をつくるときには、「一字の形」をどう配置し、どう見せるかがとても重要になります。
同じ字でも、縦長に見せるのか、横にゆったりさせるのか、あるいは点画の角度を少し変えるだけでも印象が大きく変わります。
作品づくりでは、こうした細かな選択の積み重ねが、最終的な迫力や品格につながっていきます。
③ 試験や字形研究の教材として
五體字類は、字源・字形の学習を体系的にしたいときの強力な資料です。
同じ字でも書体によってどのように形が変化するのかを一目で比較できるため、昇段試験や師範試験に向けた「正しい字形の確認」に非常に役立ちます。
手元に置きたい一冊
五體字類は、各書体の字形を一覧で比較できる資料として、作品制作や学習の場面で幅広く活用されてきました。
一字の成り立ちや形の変化を確認したいときに参照できるため、書道に取り組む人々の間で長く親しまれている一冊です。
現在、Web 上でも昭和期の五體字類の内容を画像で閲覧できるページが存在します。
最新の収録字や編集内容については書籍版を参照する必要がありますが、手軽に過去版の字形を確認できますので、気になる方はぜひご覧になってみてください。