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オリンピック競技に剣道がない理由


皆さんこんにちは。S.Y.です。

突然ですが皆さんは今年のパリオリンピック、パラリンピックではどの種目をご覧になられましたか。
単純に興味がある種目に加え、学生の頃に部活動で取り組んでいた競技や趣味のスポーツなどをチェックした方は多いのではないのでしょうか。

残念ながら私が学生の頃に所属していた部活動はオリンピック競技にはない剣道です。
似たような競技として柔道やフェンシングなどはあるのに、剣道がないのはなぜでしょうか。

そもそも…

そもそも剣道はオリンピック競技になるための競技規模の基準を満たしていません。
日本国内で見ると剣道人口は柔道人口よりも遙かに多いのですが、世界的に見るとオリンピック競技に採用される条件を満たすほどは広まっていないようです。

引用:
オリンピック憲章 1996年 第5章 オリンピック競技大会 | 52
国際剣道連盟について | FIK

また、オリンピック競技になることで、試合の勝敗のみが重視され、剣道の礼節を重んじる精神が失われてしまうことを危惧して、オリンピック競技化を反対する声もあります。
そしてこれらに加え、剣道の勝敗を決める「一本」の判定が非常に難しく、わかりづらいことも理由として挙げられます。

「一本」の条件

剣道は基本的に制限時間内に二本先取したほうが勝者となります。
判定が難しく、わかりづらい理由は、一本が成立するための条件が多いからです。

全日本剣道連盟の剣道試合審判規則には以下のように書かれています。
「有効打突は、充実した気勢、適正な姿勢をもって、竹刀の打突部で打突部位を刃筋正しく打突し、残心あるものとする。」

引用:
剣道試合審判規則

この条件について要素ごとに説明します。

充実した気勢(掛け声)
打突と同時に捉えた部位の名称を大きな声で叫ぶ必要があります。
掛け声が不十分だと一本にはならないということです。
余談ですが、剣道経験がない方からすると、この掛け声は部位の名称を叫んでいると言うより、ただ奇声を上げているように聞こえると思います。
信じてもらえないかもしれませんが、本人はちゃんと各部位の名称を叫んでいるつもりです。
ただし、「めん」「こて」などを正しく発声しようとうすると非常に叫びづらいので、おのおの叫びやすいように自然と発声が変化してしまうのです。

適正な姿勢
打突時の姿勢も重要です。
正しく部位を捉えていても、姿勢が大きく崩れていたり、その場でバランスを崩して転んだりしてしまうと一本にはなりません。

踏み込み
有効打突の条件には書かれていませんが、踏み込みという要素も必要です。
実は、竹刀の打突と同時に右足で床を強く踏み込んで、音を鳴らしています。

正確な打突
まず面、小手、胴、突きのいずれかの部位を竹刀で正確に打突する必要があります。
その上で、竹刀の物打(ものうち)と呼ばれる範囲内で、なおかつ刀でいう「刃」に当たる面で各部位を捉える必要があります。
そのため、ただ竹刀が各部位に当たればいいというわけではありません。
また、ここまでまとめると打突時に聞こえてくる音は、竹刀の打突音、掛け声、右足の踏み込み音の3種類で、これらの音が同時に聞こえる必要があります。

残心
最後に残心という要素があります。
これは他とは異なり打突の瞬間ではなく打突後の動きについての要素です。
技を打った後も、相手の反撃に備え、すぐに次の技が打てる姿勢を保っておく必要があります。
最後の残心が不十だと、せっかく審判が一本と判断したものが取り消されてしまいます。

剣道で一本を取るためにはこれらの要素を全て満たす必要があります。
そのため、フェンシングのように機械的に判断することができません。
この判定の難しさがあるため、オリンピック競技として成立させるためには、おそらく何らかのルールの改定が必要だと思われます。

まとめ

剣道はオリンピック競技になることで、精神面やルールが大きく変化してしまう可能性が高いため、競技人口の問題が解決されとしても、やはりオリンピック競技になることは難しいと思われます。
個人的にはオリンピックで剣道が見られないのは少し寂しいものの、剣道は今の姿を保ったまま、正しく世界に広まっていくことが望まれているのだと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。