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自分のじょんから節を作る


皆さんこんにちは。S.Y.です。
今回は趣味の津軽三味線について書かせていただきました。

「自分のじょんから節を考える」とは?

津軽じょんから節を含むを津軽五大民謡と呼ばれる5つの民謡は、それぞれの曲として成立するための曲構成や使える音、リズムなどのルールのもとで、自由に曲を作ることができるという特徴があります。
言い換えると、津軽五大民謡を演奏するには、それぞれのルールを踏まえながら、自分で曲を作り上げる必要があるということです。
もしくは、三味線教室に通って、先生に作曲してもらうという方法もあります。

私は大学から津軽三味線を始めて、現在は趣味として続けていますが、
「津軽民謡に携わる方々にも認めてもらえるような演奏ができるようになりたい」
という思いがあり、年に1回、津軽三味線の大会に出場しています。
津軽三味線の大会では基本的に「津軽じょんから節」を演奏するため、出場するには大会で演奏するじょんから節を自分で作らなければなりません。
私が出場しようと思っている大会はまだかなり先なのですが、自分でじょんから節を作るのは時間がかかるので、最近ぼちぼち作り始めています。

どのように自分のじょんから節を作るのか

じょんから節を成立させるルールや、フレーズを考える際に意識するポイントを踏まえながら、じょんから節を作り上げていきます。

調弦

まずは調弦を決めます。
調弦とはチューニングのことです。
じょんから節は三味線用語で「二上がり」と呼ばれる調弦で演奏されます。
「二上がり」を音楽的に言うと、以下のようになります。
一弦:基準音
二弦:一弦に対して完全五度高い音(一弦が[ド]であれば二弦は[ソ])
三弦:一弦に対して1オクターブ高い音(一弦が[ド]であれば、三弦は次の[ド])


↑ 左から、一番太く見えやすいのが一弦、真ん中が二弦、一番細いのが三弦です。

この「二上がり」という弦と弦の音のバランスを保った上で、音の高さは自由に変えることができます。
音を低くセッティングすると、弦の張りが緩くなり、演奏しやすくなりますが、音の迫力が下がってしまいます。
逆に音を高くセッティングすると、弦の張りが強くなり、音の迫力は増しますが、演奏するのが難しくなります。
そのため、調弦はあらかじめ決めてはおくものの、大会当日のコンディション次第で変更する可能性がある要素です。

使える音

じょんから節で使っていい音は、例えば調弦で一弦を[ド]にセッティングした場合、以下のようになります。

ド・レ・ミ♭・ファ・ソ・シ♭・ド

弾いてみると少し暗い雰囲気、クールな雰囲気を感じる音の組み合わせです。
音楽的に言うとナチュラル・マイナー・スケールと呼ばれる音階に含まれる音を使っています。
同じ音階を使った楽曲をCopilotに聞いてみたところ、以下のような有名な曲がありました。
「Lemon」 – 米津玄師
「フライングゲット」 – AKB48
「Billie Jean」 – Michael Jackson

 

曲構成

イントロ、Aメロ、Bメロ、サビのように、じょんから節にもある程度定められた曲の構成があります。
その構成から大きくは外れないように、曲の流れを考えていきます。

撥付け

「撥付け」とは「前撥(まえばち)」、「後撥(うしろばち)」と呼ばれる2種類の撥の動きを使い分けて、曲ごとのリズムを表現する技法です。
前撥、後撥の「前後」は何を表しいるかというと、撥を当てる位置を表しています。
前撥は三味線の胴の端のほうに撥を当て、後撥は三味線の胴の中央に撥を当てます。

【前撥の位置】

【後撥の位置】

 

【じょんから節の撥付け】
じょんから節は、以下の動きを繰り返しながら演奏します。
①前撥で叩き
②前撥でスクイ
(スクイは叩きと逆の動きで、撥を弦の下から上に引っ掛けるように動かして音を出す方法)
③後撥で叩き
④後撥で叩き

例外として、前撥が連続する部分や後撥が連続する部分もありますが、曲全体を通して、この前撥、後撥の順序が逆転しないようにフレーズを組み立てる必要があります。

 

オリジナリティと津軽らしさ

これは近年の大会で重要視され始めた要素になります。
じょんから節は、奏者ごとにフレーズを考えて曲を作るため、さまざまなオリジナリティ溢れるフレーズが奏者の数だけ生み出され、変化してきました。
その結果、ルールには基づいているものの、かつてのじょんから節が持っていた雰囲気が失われつつあります。
そこで「津軽らしさ」が感じられる演奏が求められるようになってきました。
非常にあいまいで感覚的な要素なので、言語化するのはなかなか難しいですが、例えば「津軽らしい演奏とは、津軽の風景(岩木山とか)が思い浮かぶような演奏」などと言われることがあります。
難しいですね…

津軽らしさについては、とりあえず先人たちの音使いを参考にしながら、フレーズを考えていく必要がありそうです。

まとめ

津軽三味線の大会では、もちろん演奏の技量やミスの有無なども見られますが、それに加え、曲の雰囲気やルールから外れていないかなども見られます。
そのため、ルールに基づいた津軽らしいじょんから節の作曲は、演奏技術の向上と同じくらい重要です。
今回書いた内容に注意しながら、大会に向けて自分なりのじょんから節を作っていきます。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。